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東京地方裁判所民事第46部 令和8年9月18日 令和6(ワ)70396 判決・請求棄却

アニメーション映画の制作過程で従業員が作成したキャラクターのイラストについて、制作会社が主張した著作権と氏名表示権の侵害を認めず、差止め等の請求を棄却した。

著作権侵害等差止請求事件

事案
アニメーション制作会社である原告は、テレビ用アニメーション映画の制作を請け負い、その過程で原告の従業員が、映画に新たに登場するキャラクターの全身のイラストを作成した。映画は、原告を含む複数の会社が共同で製作した。原告は、キャラクター商品等を販売する被告が、同イラストに係る原告の著作権(複製権又は翻案権、譲渡権、公衆送信権)と著作者人格権(氏名表示権)を侵害しているとして、被告の商品の製造販売と商品画像の公衆送信の差止め、商品の廃棄及び謝罪広告の掲載を求めた。被告は、著作権は原告から映画の幹事会社を経て被告に移転していること、原告は被告に著作者人格権を行使しないと合意していることなどを主張した。映画の幹事会社を吸収合併した会社からの新設分割で設立された会社が、補助参加人として訴訟に参加した。
争点
同イラストの著作権は原告から被告に譲渡されたか。映画の共同製作契約により、同イラストの著作権は共同製作者の共有になったか。原告は被告に著作者人格権を行使しない旨を合意したか、合意したとして、被告が商品等に付した表示との関係で、その合意は有効か。
判断
裁判所は、請求をいずれも棄却した。同イラストの作成にあたり参考にされた原画の制作や、被告の従業員がまつ毛を加えたことは、創作的関与とはいえず、同イラストは原告の従業員が創作したものであり、原告の単独著作であることを前提に検討するとした。著作権の譲渡について、裁判所は、平成17年3月2日当時の譲渡書面はないものの、原告と映画の幹事会社が平成21年以降に被告宛てに作成した確認書や、平成23年に原告が作成した譲渡証書及び著作権登録申請書に、同日付けで著作権が譲渡された旨の記載があること、幹事会社が被告への移転登録を申請したこと、制作過程で新たに創作されるキャラクターのイラストの著作権の譲渡を受けることは、映画の著作権等を一元的に管理するうえで合理的であること、被告がキャラクターを用いた事業を展開するなかで、原告が令和4年に幹事会社の元担当者に相談するまで著作権者としての行動をとらず、被告に対し令和5年まで異議を述べていないことなどを挙げた。そして、原告は遅くとも同日頃までに著作権を幹事会社に譲渡し、著作権は幹事会社を経て被告に移転したと認めた。原告の、確認書等は過去の一時点の権利の所在を示すと理解して押印したとの主張、対価が支払われていないとの主張、著作権は共同製作者の共有に属すると認識していたとの主張は、いずれも採用しなかった。共同製作契約により共有になったとの主張についても、共同製作者が共有とする意思を有していたとは認められないとして退けた。以上から、原告は被告の行為の当時、同イラストの著作権を有していたとはいえないとした。著作者人格権について、裁判所は、原告と被告は平成17年3月2日頃、原告が被告に対して著作者人格権を行使しない旨を合意したと認めた。原告は、被告が商品やウェブサイトに付した表示は、真の著作者でない被告を著作者として表示するものであり、そのような表示を許容する不行使の合意は著作権法121条等の趣旨に反して無効だと主張した。裁判所は、各表示は、その位置づけや記載内容から、著作者名の表示であると認めることはできない、又は直ちにそう断ずることはできないとした。そのうえで、同条の趣旨を踏まえても、不行使の合意のうち、これらの表示について著作者人格権を行使しないとする部分が、公の秩序に反する(民法90条)とまではいえず、無効とはいえないとした。このため、著作者人格権に基づく請求も理由がないとし、著作者名の表示の省略の可否と謝罪広告の必要性については、判断しなかった。
関係条文
著作権法15条1項、19条3項、27条、28条、112条、115条、121条、民法90条

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