ITJ Lab
← 判例ウォッチ 2026.10.22

最高裁判所第三小法廷 令和2年7月21日 平成30(受)1412 判決・棄却

写真を無断掲載した投稿をリツイートした者は、システムの仕様で著作者名の表示部分がトリミングされて表示されなくなった場合、氏名表示権を侵害した「侵害情報の発信者」に当たるとした。

発信者情報開示請求事件

事案
写真家である原告は、自分が撮影した写真の隅に©マークと氏名を付した画像を自分のウェブサイトに掲載していた。平成26年12月、短文投稿型のSNSのあるアカウントで、この画像を複製した画像を含む投稿が無断でされ、画像ファイルがサーバーに保存された。その後、別の3つのアカウントがこの投稿をリツイート(再投稿)した。リツイートをすると、元の画像ファイルへのリンクと表示の仕方を指定するデータが各アカウントのタイムラインのページのサーバーに記録され、閲覧者の端末には元の画像が自動的に送られて表示される。このSNSの仕様により、タイムラインに表示される画像は上下がトリミングされ、氏名表示部分が表示されなくなっていた。原告は、SNSの運営者に対し、法4条1項に基づき、リツイートをした者の発信者情報の開示を求めた。原審はこれを認めた。
争点
(1)著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は、同法21条から27条までの権利に係る著作物の利用によることを要するか。(2)リツイートをした者は、氏名表示権を侵害したといえるか。元の画像をクリックすれば氏名表示部分を見られることをもって、著作者名を表示したといえるか。(3)リツイートによる氏名表示権の侵害について、リツイートをした者は法4条1項の「侵害情報の発信者」に当たり、「侵害情報の流通によって」権利を侵害したといえるか。
判断
(1)著作権法19条1項は、文言上その適用を同法21条から27条までの権利に係る著作物の利用による場合に限定しておらず、著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護する趣旨は、そのような利用を伴うか否かにかかわらず妥当する。したがって、「著作物の公衆への提供若しくは提示」は、これらの権利に係る著作物の利用によることを要しない。リツイートをした者が著作権侵害となる利用をしていなくても、閲覧者の端末の画面に画像を表示したことは「提示」に当たる。(2)リツイートをした者は、リンクと表示の仕方を指定するデータを送信したことで、トリミングされて氏名表示部分のない画像を表示させ、他に著作者名を表示しなかった。表示の仕方はSNSの仕様によるが、それを認識しているか否かにかかわらず、そのシステムを利用してリツイートをした以上、客観的にはその行為によって生じた事態である。画像をクリックすれば元の画像を見られるとしても、それは別のウェブページに氏名表示部分があるにとどまり、閲覧者が通常クリックするといえる事情もないから、著作者名を表示したことにはならない。したがって、リツイートをした者は氏名表示権を侵害した。(3)リツイートをした者は、主観的な認識にかかわらず、リンクと表示の仕方を指定するデータを特定電気通信設備の記録媒体に記録して閲覧者の端末に送信し、トリミングされた画像を表示させて氏名表示部分が表示されない状態をもたらしたのであるから、このデータの送信が氏名表示権の侵害を直接的にもたらしている。このデータの流通によって権利が侵害されたといえ、リツイートをした者は「侵害情報」であるこのデータを記録媒体に記録した「侵害情報の発信者」に当たる。上告を棄却した。裁判官1名の補足意見と、裁判官1名の反対意見(リツイートをした者は画像の表示の仕方を変更できず、無断で画像を掲載したのは元の投稿をした者であるから、著作者人格権侵害の主体とは評価できないとするもの)がある。
関係条文
著作権法19条1項、19条2項、改正前プロバイダ責任制限法4条1項
判示事項
1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要するか 2 ツイッターにおいて,著作者の氏名が表示された写真の画像を含むツイートをリツイートした者が,その氏名表示権を侵害したとされた事例 3 ツイッターにおいて,著作者の氏名が表示された写真の画像を含むツイートをリツイートした者が,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」著作者の氏名表示権を侵害したものとされた事例(裁判所ウェブサイトの記載)

English summary

同じ法令が関係する判例

法令別の一覧 →

裁判所ウェブサイトの「最近の裁判例」に新しく掲載された裁判例を、週に一度、要旨にまとめています。裁判所が作成した要旨ではありません。要約の過程で、誤りや抜けが生じることがあります。引用や判断の根拠にする前に、必ず裁判所ウェブサイトの全文を確認してください。掲載は網羅的ではなく、個別の事案についての法的助言でもありません。