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知的財産高等裁判所第1部 令和8年9月17日 令和8(ネ)10039 判決・控訴棄却
出版社による書籍の増刷が著作権侵害に当たるかが争われ、出版権設定契約に基づく重刷についての黙示の合意と、出版権の消滅後の増刷ごとの許諾を認めて、請求を棄却した原判決を維持した。
損害賠償請求控訴事件
- 事案
- 書籍の著作者である控訴人は、出版社である被控訴人が書籍を重刷して発行した行為は、控訴人の複製権及び譲渡権を侵害するとして、損害賠償金2978万2500円等の支払を求めた。原審は請求を全部棄却し、控訴人が控訴した。
- 争点
- 出版社による書籍の重刷について、著作者の許諾があったといえるか。
- 判断
- 原判決を引用して、書籍は出版社の企画として著作者に原稿の執筆を依頼したものであり、権利関係を出版社が集中的に管理する必要もあるなどの事情から、遅くとも平成20年5月頃までに、著作者が出版社に出版権を設定し、出版社が対価として原稿料50万円及び監修料10万円(いずれも税別)を支払う旨の契約を締結したと認めた。著作者が出版権設定契約と出版許諾契約の差異を知らなかったとしても、この認定の妨げにならないとした。契約書は作成されていないが、著作者が、2刷の決定の連絡を受けて追加の支払の有無を尋ね、追加の支払はできない旨の回答に異議を述べず、3刷以降も異議を述べていないことや、出版権者が慣行に従い継続して出版行為を行う義務を負うこと(著作権法81条1項1号ロ)から、出版権の法定存続期間である3年間(同法83条2項)は、追加の対価の支払を要せず重刷できる旨を黙示に合意したと認めた。出版権は平成23年5月頃に消滅したとしたが、平成30年3月から令和5年6月にかけて、増刷が決定するたびに、出版社の従業員が増刷に先立って著作者にメールで連絡し、著作者から特段の異議は述べられなかったことが推認され、出版社は増刷について都度著作者の許諾を得ていたと認めた。したがって増刷は著作権侵害の不法行為に当たらないとして、控訴を棄却した。口頭弁論再開の申立てについては、許諾を認定することは弁論主義に違反しないとして、再開しなかった。
- 関係条文
- 著作権法81条1項1号ロ、83条2項
同じ法令が関係する判例
- 最高裁判所第三小法廷 令和2年7月21日 平成30(受)1412写真を無断掲載した投稿をリツイートした者は、システムの仕様で著作者名の表示部分がトリミングされて表示されなくなった場合、氏名表示権を侵害した「侵害情報の発信者」に当たるとした。
- 最高裁判所第二小法廷 令和8年10月9日 令和6(受)2078著作物に当たらない楽譜を細部まで模倣して制作し、ウェブサイトで無料公開した行為が、不法行為を構成するとした原審の判断を是認した。
- 知的財産高等裁判所第2部 令和8年10月7日 令和7(ネ)10027等地方公共団体のキャラクターに関連して、事業者によるキャラクターの利用に黙示の許諾があったとして反訴請求を退け、地方公共団体の取引先への書面送付等を不正競争と認めて、損害賠償額を1887万7802円に変更した。
- 知的財産高等裁判所第2部 令和8年9月30日 令和8(ネ)10043他人が公開した動画を無断で改変して自己の動画に利用した行為につき、著作者人格権侵害による慰謝料20万円の限度で請求を認容した原判決を維持した。
- 東京地方裁判所民事第46部 令和8年9月18日 令和6(ワ)70396アニメーション映画の制作過程で従業員が作成したキャラクターのイラストについて、制作会社が主張した著作権と氏名表示権の侵害を認めず、差止め等の請求を棄却した。
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