← 判例ウォッチ 2026.10.18
知的財産高等裁判所第2部 令和8年9月30日 令和8(ネ)10043 判決・控訴棄却
他人が公開した動画を無断で改変して自己の動画に利用した行為につき、著作者人格権侵害による慰謝料20万円の限度で請求を認容した原判決を維持した。
不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求控訴事件
- 事案
- 動画共有サイトで動画を公開している一審原告は、一審被告が、一審原告の動画を無断で改変して、自身が公開した動画に利用したとして、著作権、同一性保持権及び著作権法113条11項のみなし著作者人格権の侵害による不法行為に基づき、損害賠償を求めた。原審は、一審原告の動画は著作物であり、一審被告が一部の動画について複製権を侵害したこと、引用や正当防衛は成立しないこと、同一性保持権と名誉声望保持権の侵害があることを認め、慰謝料20万円及び遅延損害金の限度で請求を認容した。双方が、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した。
- 争点
- 動画の著作物性、引用や正当防衛の成否、同一性保持権及び名誉声望保持権(著作権法113条11項)の侵害の成否、損害額。
- 判断
- 原判決を補正して引用し、一審原告の動画は、思想又は感情を創作的に表現したものとして著作物に該当し、一審被告が利用した部分にも創作的な表現があるとした。一審被告の動画は、一審原告を侮辱したり、人格的価値についての社会的評価を低下させたりする内容を含み、名誉を毀損し、あるいは名誉感情を害するものと認められ、利用された部分も同様の内容を含むとした。当審での追加主張について、一審原告の不当利得返還の主張は、不法行為に基づく損害賠償を請求する本訴においては失当であり、慰謝料は20万円が相当であるとした。一審被告の追加主張のうち、別件訴訟は名誉毀損等による損害賠償請求であるから二重起訴の禁止(民事訴訟法142条)に反しない、仮執行宣言付きの第1審判決に控訴があったとき控訴審は仮執行宣言に基づく強制執行で給付がされた事実を考慮せずに判断すべきであるから債務が消滅したとの主張は採用できない、権利の濫用に当たるとまでは認められない、とした。双方の控訴をいずれも棄却した。
- 関係条文
- 著作権法113条11項、民事訴訟法142条
同じ法令が関係する判例
- 最高裁判所第三小法廷 令和2年7月21日 平成30(受)1412写真を無断掲載した投稿をリツイートした者は、システムの仕様で著作者名の表示部分がトリミングされて表示されなくなった場合、氏名表示権を侵害した「侵害情報の発信者」に当たるとした。
- 最高裁判所第二小法廷 令和8年10月9日 令和6(受)2078著作物に当たらない楽譜を細部まで模倣して制作し、ウェブサイトで無料公開した行為が、不法行為を構成するとした原審の判断を是認した。
- 知的財産高等裁判所第2部 令和8年10月7日 令和7(ネ)10027等地方公共団体のキャラクターに関連して、事業者によるキャラクターの利用に黙示の許諾があったとして反訴請求を退け、地方公共団体の取引先への書面送付等を不正競争と認めて、損害賠償額を1887万7802円に変更した。
- 知的財産高等裁判所第1部 令和8年9月17日 令和8(ネ)10039出版社による書籍の増刷が著作権侵害に当たるかが争われ、出版権設定契約に基づく重刷についての黙示の合意と、出版権の消滅後の増刷ごとの許諾を認めて、請求を棄却した原判決を維持した。
- 東京地方裁判所民事第46部 令和8年9月18日 令和6(ワ)70396アニメーション映画の制作過程で従業員が作成したキャラクターのイラストについて、制作会社が主張した著作権と氏名表示権の侵害を認めず、差止め等の請求を棄却した。
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