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最高裁判所第三小法廷 平成22年4月13日 平成21(受)609 判決・一部破棄自判、一部棄却

裁判外の開示請求に応じなかったプロバイダの損害賠償責任(法4条4項の重過失)は、開示の要件に該当することを認識していたか、要件該当が一見明白でそれを認識できなかったことに重過失がある場合に限られるとした。

発信者情報開示等請求事件

事案
インターネット上の電子掲示板のスレッドで、学校法人の代表者である原告やその学校の活動について、様々な立場からの書き込みが続く中で、平成19年1月、原告を侮辱する一語を含む書き込みがされた。原告は同年2月、裁判外で、書き込みをした者にインターネット接続サービスを提供した経由プロバイダに対し、法4条1項に基づき発信者の氏名、住所、メールアドレスの開示を請求した。プロバイダは、発信者への意見照会で開示に同意しないとの回答があり、権利侵害が明らかとは認められないとして、開示に応じなかった。原告は、発信者情報の開示とともに、開示に応じなかったことに重大な過失(法4条4項本文)があるとして損害賠償を求めた。原審は、人を特定できる状況でその人を侮辱的な表現で指摘することは名誉感情の侵害であり、専門知識がなくても判断できるから、書き込みそれ自体から権利侵害が明らかであるとして、重過失を認め、15万円の損害賠償を認容した。
争点
裁判外の開示請求に応じなかった開示関係役務提供者が、法4条4項本文の「重大な過失」により損害賠償責任を負うのはどのような場合か。
判断
法は、発信者情報が発信者のプライバシー、表現の自由、通信の秘密にかかわり、いったん開示されると回復できないことから、権利侵害の明白性などの厳格な要件を定め(4条1項)、開示関係役務提供者に発信者からの意見聴取を義務付け(4条2項)、発信者の利益が不当に侵害されないよう十分に意を用いて要件の判断をさせることとした。慎重な判断の結果開示に応じなかった場合に一般原則に従って損害賠償責任を負わせるのは適切でないため、4条4項が責任を制限した。そうすると、開示関係役務提供者は、開示請求が4条1項各号の要件のいずれにも該当することを認識し、または要件該当が一見明白であり、その旨認識することができなかったことに重大な過失がある場合にのみ、損害賠償責任を負う。本件の書き込みは、侮辱的な表現を含むとはいえ、具体的事実を摘示して社会的評価を低下させるものではなく、名誉感情の侵害にとどまり、社会通念上許される限度を超える侮辱行為と認められる場合に初めて人格的利益の侵害が認められ得る。侮辱する文言は一語のみで、根拠を示さない意見ないし感想として述べられており、文言それ自体から限度を超える侮辱であることが一見明白とはいえず、スレッドの他の書き込みや経緯を考慮しなければ明白性を判断できない。その判断は裁判外で開示請求を受けたプロバイダにとって必ずしも容易ではないから、重大な過失があったとはいえない。損害賠償を認容した部分を破棄し、その部分の控訴を棄却した。発信者情報の開示請求に関する上告は、上告受理の決定で理由が排除されたため棄却した。裁判官全員一致。
関係条文
改正前プロバイダ責任制限法4条1項、4条2項、4条4項
判示事項
1 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者が同条4項にいう重大な過失により損害賠償責任を負う場合 2 インターネット上の電子掲示板にされた書き込みの発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者に特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条4項にいう重大な過失があったとはいえないとされた事例(裁判所ウェブサイトの記載)

English summary

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