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東京地方裁判所民事第46部 令和8年9月11日 令和8(ワ)70079 判決・訴え一部却下、請求一部棄却

特許権者が、前訴で技術的範囲に属しないとされた電子契約サービスの装置について再び不当利得返還を求めた訴えは、前訴の蒸し返しで不適法であるとして、被告2社に対する訴えを却下し、残る1社に対する請求を棄却した。

不当利得返還請求事件

事案
原告は、内容証明を行う通信システム及び内容証明サイト装置に関する特許権(請求項8に係る発明)を有していた。原告は、被告3社に対し、被告らが特定の構成を有する装置(イ号物件)を使用して特許権を侵害したと主張し、民法703条に基づき、平成18年4月28日から令和元年12月28日までの期間の不当利得金のうち1000万円等の支払を求めた。被告のうち2社は、同期間に電子契約サービスを提供していた。原告は、以前に、この2社に対し、同サービスに使用された原本性証明に係る装置(前訴サーバ)が発明の技術的範囲に属するとして、民法709条に基づく損害賠償を求める訴訟(侵害期間は平成20年3月1日から平成23年3月31日まで)を提起した。前訴では、前訴サーバは技術的範囲に属しないとして請求が棄却され、平成26年1月31日に上告棄却及び上告不受理決定がされて確定した。残る1社は、同期間の後(令和4年11月1日)に設立された会社である。
争点
本件訴えの提起が信義則に反するか。被告らがイ号物件を使用したか。
判断
裁判所は、まず、前訴と本件訴訟の請求は、対象装置の特定の仕方や期間が異なるものの、被告2社が提供していた電子契約サービスに使用された原本性の証明ないし担保に係る装置の使用が特許権侵害にあたるとする点で共通するとした。そして、原告は、イ号物件が使用された電子契約サービスの名称を具体的に特定しておらず、裏付けとして提出した書籍の抜粋にも、被告2社が同サービス以外の名称で電子契約サービスを提供していたことの記載はなく、期間の前後で装置が前訴の侵害期間の装置と異なることの具体的な主張もないとした。これらを総合し、原告は前訴で認定された行為と異なる行為を特定して主張したものとはいい難く、前訴の判断を争うために本件訴訟を提起したものにほかならないから、前訴を実質的に蒸し返すものであり、被告2社に対する訴えの提起は信義則に反し不適法であるとして、訴えを却下した。そのうえで、事案にかんがみ、イ号物件の使用についても検討した。書籍の抜粋には、契約書が電子契約サービスから原本性証明サービスに送信されて登録・保管されることなどが記載されており、被告らが使用する装置が原本そのものを受領・保管することなく署名者の真正性及び契約内容の非改ざん性を検証する構成を有することを認めることは困難であるとした。他に、被告らが同期間にイ号物件の構成を有する装置を使用したと認めるに足りる的確な証拠はなく、残る1社は同期間の後に設立された会社であることからも、同期間にイ号物件を使用していなかったことが明らかであるとした。仮に被告2社に対する訴えの提起が不適法でないとしても、被告らがイ号物件を使用したことは認められないから、請求は理由がないとした。結論として、被告2社に対する訴えを却下し、残る1社に対する請求を棄却した。
関係条文
民法703条

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