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知的財産高等裁判所第3部 令和8年7月14日 令和8(ネ)10025 判決・控訴棄却

将来のクレジット債権を買い取る資金提供システムの特許に係る独占的通常実施権の侵害と営業秘密の不正使用を理由とする損害賠償請求について、原判決を維持し、控訴を棄却した。

特許権侵害等に基づく損害賠償請求控訴事件

事案
控訴人会社は、「未確定の将来クレジット債権の買い取りによるクレジットカード加盟店への無担保のファンディングシステム」の特許について独占的通常実施権の設定を受けたとして、被控訴人が提供するサービスのシステムの生産及び使用が侵害に当たると主張し、損害賠償4400万円(一部請求)等を求めた。控訴人会社の代表者である控訴人は、自己が保有する営業秘密を被控訴人が使用したことが不正競争防止法2条1項7号の不正競争に当たるなどとして、損害賠償1100万円(一部請求)等を求めた。原審は請求をいずれも棄却し、控訴人らが控訴した。控訴人会社は、当審で均等の主張を追加した。
争点
被控訴人のシステムは特許発明の技術的範囲に属するか(文言上の充足と均等)。控訴人が主張する情報は、控訴人の保有する営業秘密か、また被控訴人はこれを使用したか。
判断
裁判所は、控訴人らの請求はいずれも理由がないとした。文言侵害について、特許請求の範囲の「クレジットカード会社」にクレジットカード決済代行サービスが含まれるかが問題となったが、明細書には、クレジットカード決済代行会社が、加盟店とクレジットカード会社の間に位置づけられる異なる存在として記載されているから、これを含むと解することは明細書の記載に反するとし、構成要件Aを充足しないとした。また、債権化パターン設定部に関する構成要件Cは、債券化対象期間を設定し、その期間に対応する前年度期間の実績売上高に債券化割合を乗じて将来クレジット債権の買取債券の額面を設定するものであるのに対し、被控訴人のシステムの引落総額は、加盟店が利用金額と引落率を選択することにより計算され、債券化対象期間は設定されていないとして、構成要件Cも充足しないとした。引用する原判決のうち「通信ネットワークで接続」の構成に関する判示部分は削った。均等については、裁判所は、特許発明の課題が、既に行われていたファクタリングや融資の問題点に対応することにあることを前提に、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、少なくとも、ファンディング事業者が使用するサーバがクレジットカード会社の情報処理サーバと通信ネットワークで接続されていること、及び、債券化対象期間を設定し、実績売上高に債券化割合を乗じて額面を設定することにあるとした。被控訴人のシステムは、これらの点で特許発明と異なるから、異なる部分は本質的部分であり、均等の第1要件を充足しないとした。営業秘密については、控訴人が主張する情報の獲得の経緯を示す客観的証拠がなく、提出された書証には控訴人の関与が記載されていないこと、情報の内容が抽象的で管理態様も明らかでなく、秘密として管理されていたとは認められないこと、被控訴人が情報を取得したとされる時点で有用性、非公知性があったか疑問があることなどを挙げ、控訴人が情報を保有していたとは認められないとした。さらに、被控訴人による使用も認められないとし、控訴人が主張する情報の核心部分は、平成30年12月5日の時点で公知であったとも述べた。
関係条文
不正競争防止法2条1項7号、4条、民法709条

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