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東京地方裁判所民事第46部 令和8年9月16日 令和6(ワ)70159 判決・請求棄却

共有フォルダに保存された受注予算書等の情報について、秘密として管理されていたとは認められず、不正競争防止法上の営業秘密に当たらないとして、差止め及び損害賠償の請求を棄却した。

不正競争行為差止及び損害賠償請求事件

事案
原告は、建築鉄骨の設計、組立、施工の請負等を営む株式会社である。被告らは、原告の元従業員であった。原告は、社内システムの共有フォルダに、駐車場建設工事の受注予算書、地区別の材料単価表、中期経営計画、技術提案書などを保存していた。被告の一方は、他方の依頼により、令和4年9月4日、原告から貸与されたパソコンにこれらの文書をダウンロードし、他方に送信した。原告は、被告らが文書記載の情報(本件各情報)を取得、開示又は使用したことが、不正競争防止法2条1項4号の不正競争にあたると主張した。原告は、本件各情報の使用等の差止め、データの削除、並びに損害賠償として合計3499万2386円及び遅延損害金の連帯支払を求めた。この損害には、受注を失ったことによる逸失利益(一部請求として3000万円)、弁護士費用、調査費用等が含まれる。
争点
本件各情報が、不正競争防止法2条6項の「営業秘密」にあたるか。とくに、「秘密として管理されて」いたといえるか。
判断
裁判所は、まず、次の事実を認定した。共有フォルダには、原告の全従業員554名のうち469名が、所属部門に関わらず貸与パソコンからアクセスでき、経理や人事などの管理部門のフォルダとは異なり、アクセスが限られていなかった。共有フォルダには、本件各文書と、営業秘密にあたらないことが明らかな一般情報及び公表情報のファイルが混在し、ファイルは少なくとも数千個であった。本件各文書にはパスワードが設定されておらず、秘密であることを示す表示もなかった。そのうえで、アクセス権限を有する従業員に対し、本件各情報が秘密として管理されていることを容易に認識し得る措置が執られていたかを検討した。アクセス制限については、約85パーセントの従業員にアクセス権限があり、一般情報や公表情報も混在していたことから、アクセス制限の存在を認識していたとしても、本件各情報が秘密として管理されていると容易に認識し得たとは認められないとした。貸与パソコンのセキュリティソフトによるデバイス接続の制限や、社外提出書類及びUSB機器に関する通達は、貸与パソコンからアクセスできる全てのデータを対象とするもので、公表情報も含まれるから、同様であるとした。契約上の措置については、就業規則の規定は、秘密として管理する情報を特定するには概括的かつ抽象的にすぎるとし、入社時や退職時の誓約書、約6年前の研修資料も、容易に認識し得る措置が執られていたことを裏付けるに足りないとした。情報の重要性についても、材料単価や利益率は工事の時期、場所、材料の種類等によって変動するもので一律に重要性が高いとはいえず、文書の保存状況や秘密表示のないことなどから、内容から当然に秘密とすべきと容易に認識し得たとは認められないとした。以上により、本件各情報は「営業秘密」にあたらないとし、その余の点(不正競争の有無、損害など)は判断するまでもなく、請求をいずれも棄却した。
関係条文
不正競争防止法2条1項4号、2条6項、3条、4条

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