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東京地方裁判所民事第47部 令和8年8月4日 令和6(ワ)70538 判決・請求棄却
加熱式たばこ用のスティックに関する特許権の侵害が争われた事件で、被告製品は構成要件を充足せず、特許にはサポート要件違反及び実施可能要件違反の無効理由もあるとして、請求を棄却した。
特許権侵害損害賠償請求事件
- 事案
- 原告は、「芳香カートリッジ」に関する発明の特許権(分割出願に係るもの)を有する。原告は、被告が譲渡等をするたばこスティック(被告製品)が本件発明の技術的範囲に属し、その譲渡等は特許権侵害に当たると主張し、不法行為に基づき、特許法102条2項による損害7億2600万円を下らない額の一部として、1000万円と遅延損害金の支払を求めた。本件発明は、被加熱芳香発生体が「煙及び香気成分の気体生成持続材料である無機粒子」を含むことなどを特定している。被告製品の製造元の関連会社である補助参加人が、被告を補助するため訴訟に参加した。被告製品の構成は当事者間で争いがあった。
- 争点
- 被告製品は、構成要件D(被加熱芳香発生体が気体生成持続材料である無機粒子を含む)を充足するか。本件特許にサポート要件違反及び実施可能要件違反の無効理由があるか。
- 判断
- 裁判所は、事案に鑑み、まず構成要件Dの充足性を検討した。被告製品のタバコシート表面には無機粒子が存在する蓋然性が相応にあるが、被告製品の製造工程で無機粒子を添加する工程があることを認める証拠はなく、粒子が原告の主張する化合物として存在することも確実とはいえず、存在には疑いが残るとした。そのうえで、「気体生成持続材料」は本件明細書の用語であり、気体放出量を安定化する機能を有するものと理解されるとし、無機粒子が充填物の表面に存在することで、充填物同士の接触面積を低減し、エアロゾルフォーマのブリードアウトによる融着を阻害し、ブリードアウトを抑制して、気体放出量を安定化する機能を有する無機粒子をいうと解した。本件明細書の実施例及び比較例並びに記載を踏まえ、無機粒子が表面に存在するというだけでこの機能を有するとはいえず、明細書に記載された所定の粒子径、添加量、充填率の条件を満たす必要があると解するのが合理的であるとした。原告は、被告製品の無機粒子の粒子径、添加量、充填率について主張立証しておらず、気体生成持続材料として機能することの立証がないから、構成要件Dを充足しないとした。さらに、無効理由として、本件発明は無機粒子の粒子径、添加量、充填率について限定がなく、当業者が課題を解決できると認識できる範囲は所定の条件を満たすものに限られるから、サポート要件(特許法36条6項1号)を満たさず、明細書には限定した無機粒子の記載しかないから、実施可能要件(同条4項1号)も満たさないとした。その余の点は論じるまでもなく、原告は特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使し得ないとして、請求を棄却した。
- 関係条文
- 特許法36条4項1号、36条6項1号
同じ法令が関係する判例
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