著作権の権利ガイド テーマ別:ネット上の侵害
ネット上の侵害の規範の整理(専門家)
ネット上の利用に関わる著作権法の権利と、情報流通プラットフォーム対処法の開示の手続の条文の構造を整理します。
このページの判決文の引用は、裁判所ウェブサイトの PDF をもとにしていますが、原本との文言の照合がまだ済んでいません。照合前の引用には「原文照合前」と表示しています。正確な文言は、各判決の全文で確認してください。
1. このページの範囲
このページは、ネット上の利用に関わる著作権法の権利と、情報流通プラットフォーム対処法の開示の手続の条文の構造を整理するものです。評価や実務への示唆は書いていません。開示の要件の解釈、P2P での開示、ログイン時の情報の開示は、ここでは扱いません。
2. 条文の構造
「対処法」は、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法、平成13年法律第137号)。条文の本文は条文ナビ(/kaiji)を参照。
- 著作権法 第21条
- 複製権
- サーバーへの保存など、著作物を有形的に再製する権利。
- 著作権法 第23条第1項
- 公衆送信権
- 著作物を公衆送信し、自動公衆送信の場合は送信可能化する権利。
- 著作権法 第19条第1項
- 氏名表示権
- 著作物の公衆への提供・提示に際し、著作者名の表示を決める権利。
- 対処法 第5条
- 発信者情報の開示請求
- 権利を侵害されたとする者が、特定電気通信役務提供者に対し、発信者情報の開示を請求できる場合を定める。
- 対処法 第6条
- 開示関係役務提供者の義務
- 開示の請求を受けたときの発信者への意見の聴取、開示命令を受けたときの通知など。
- 対処法 第8条
- 発信者情報開示命令
- 裁判所は、申立てにより、決定で、発信者情報の開示を命ずることができる。
- 対処法 第15条・第16条
- 提供命令・消去禁止命令
- 開示命令事件の係属中に、発信者を特定できなくなることを防ぐための命令。
表は条文の要点をまとめたもので、条文の文言そのものではありません。
3. 判決ごとの整理
最高裁判決は通称を1回だけ併記し、下級審は裁判所・日付・事件番号で示します。当事者は役割で書いています。金額の数字は載せていません。
最高裁判所第三小法廷 令和2年7月21日判決(平成30年(受)第1412号)
いわゆるリツイート事件
事案
[写真家]が撮影し、隅に自分の名前を表示した写真が、無断で SNS に投稿されました。さらに、その投稿を自分のアカウントで再投稿(リツイート)した人たちがいました。
再投稿の表示では、画像の上下が切れて表示され、写真家の名前の部分が見えない状態になっていました。[写真家]が、氏名表示権の侵害などを理由に、SNS の運営会社に、再投稿した人の発信者情報の開示を求めました。
裁判所の判断
第19条第1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は、第21条から第27条までの権利に係る著作物の利用によることを要しないとしました。
名前の部分が切れた画像が表示されている場合、閲覧者が画像をクリックすれば名前の入った元の画像を見られるとしても、それは別のページでしか見られず、通常クリックされるともいえないなどとして、再投稿した人が著作者名を表示したことにはならないとしました。
そのうえで、開示の請求を認めた原審の判断を維持し、上告を棄却しました。
判決文・裁判要旨から
裁判要旨「著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しない。」原文照合前
4. 並べて見えること
- ・最高裁令和2年7月21日判決は、第19条第1項の「公衆への提供若しくは提示」が第21条から第27条までの権利に係る利用によることを要しないとしており、複製や公衆送信に当たらない形の表示でも、氏名表示権が問題になり得ることを示しています。
- ・同判決は、著作者名が表示されているといえるかを、閲覧者の通常の閲覧の仕方に即して判断しています。
- ・情報流通プラットフォーム対処法は、開示の請求(第5条)と、裁判所の決定による開示命令(第8条)の二つの方法を定め、いずれについても発信者への意見の聴取(第6条)を置いています。
5. 残る問い
- ・埋め込み表示やリンクなど、作品をサーバーに置かない形の表示で、どの権利が問題になるか。
- ・再投稿のように、もとの投稿を表示させる行為について、ほかの権利(同一性保持権など)はどう扱われるか。
6. 資料
- 最高裁判所第三小法廷 令和2年7月21日判決(平成30年(受)第1412号)
- 条文ナビ:情報流通プラットフォーム対処法(発信者情報開示)
- e-Gov 法令検索「著作権法」
- 文化庁「令和8年度 著作権テキスト」
判決の整理は、判決文に書かれていることをまとめたもので、評価や、個別の事案への当てはめを示すものではありません。法律相談・法的助言ではありません。
【試作】このページの条文は、e-Gov 法令検索の原文との確認がまだ済んでいません。順に取得し直します。その後の改正は反映されていないことがあります。引用や判断の根拠にする前に、e-Gov 法令検索で最新の条文を確認してください。行政資料の記載は、各資料の原文で確認してください。このページは著作権制度の一般的な説明で、法律相談や個別の事案についての法的助言ではありません。