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東京高等裁判所第24民事部 令和8年8月6日 令和7(行コ)336 判決・原判決取消し、請求棄却
国と製薬会社の間のワクチン供給契約書の全部不開示決定について、全部が情報公開法の不開示情報に当たり部分開示の問題は生じないとして、取消請求を認容した原判決を取り消した。
行政処分取消請求控訴事件
- 事案
- 被控訴人は、情報公開法に基づき、厚生労働大臣に対し、国が製薬会社との間で締結した新型コロナウイルスワクチンの供給契約書(本件文書)の開示を請求したところ、令和5年3月3日付けで、同法5条2号イの不開示情報が記録されているとして全部を不開示とする決定を受けた。被控訴人はその取消しを求めた。原審で、控訴人(国)は、同条6号ロの不開示情報も記録されていると主張した。原審は、本件文書の一部に不開示情報があるとしても、部分開示をしなかった点で決定は違法であるとして、請求を認容した。控訴人が控訴した。
- 争点
- 本件文書に記録された情報は、情報公開法5条6号ロの不開示情報に当たるか。当たるとして、その全部が不開示情報であるといえ、部分開示(同法6条1項)の問題は生じないか。
- 判断
- 裁判所は、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した。裁判所は、同法5条6号ロの「支障を及ぼすおそれ」があるというには、抽象的な可能性では足りず、実質的な支障が生ずる蓋然性が認められることを要するとした。そのうえで、(1) 本件文書は製薬会社ごとに数通から十数通の契約書から成り、金額、供給の具体的方法、所有権の取扱い等の取引条件と、これに関する機密保持義務に関する事項が記録されていること、(2) 情報公開・個人情報保護審査会が答申で、本件文書に契約内容が具体的に記載され、契約書全体に秘密保持義務が課されていると認定していること、(3) 各製薬会社の担当者が、本件文書の章立て等の構成や各章に記載されている項目を概括的にでも明らかにすれば機密保持義務に違反し、今後の同種の交渉で控訴人を義務違反の当事者として対応する旨を述べていること、(4) 当時の状況下で、国がこのような機密保持義務の設定に応じたことは不自然、不合理ではないことを挙げ、機密保持義務は契約書全体を対象とし、章立て等の構成や概括的な記載項目を明らかにするにすぎない場合でも違反となるものとして、本件文書に記録されていたと認めた。そして、ワクチン供給契約の交渉は国の機関が行う事務に当たり、パンデミックが将来生ずる可能性が低かったとはいえず、開示した場合には、製薬会社が国を義務違反の当事者として扱い、他国との取引を優先させ、不利な取引条件を提示し、又は交渉を差し控える可能性があり、ワクチンの供給を少数の製薬会社に依存する事態は十分にあり得るから、その可能性は抽象的なものにとどまらないとした。以上から、本件文書に記録された情報は、章立て等の構成や概括的な記載項目も含め、その全てが同号ロの不開示情報に当たるとした。当初の不開示決定は同号ロを理由としていなかったが、処分取消訴訟では、特別の理由のない限り、処分の効力を維持するための法律上及び事実上の根拠を主張できるとして、控訴人の主張を許した。被控訴人の主張に対しては、他国の契約書から本件文書の例外条項の内容を推認することはできないこと、機密保持義務の定めのみをもって全部が不開示情報に当たるとしたものではないこと、他国の多くが契約書を公開していたと認める証拠はないこと、被控訴人が指摘する報道や会計検査院の報告は不開示決定後のものであることを挙げ、いずれも採用しなかった。その全部が不開示情報である以上、部分開示をしなかった違法はなく、決定は適法であるとし、同法5条2号イ該当性は判断しなかった。
- 関係条文
- 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号、6条1項、行政手続法8条
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