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大阪高等裁判所 令和8年7月30日 令和5(行コ)70 判決・破棄自判(市に関する部分を取り消して請求認容、国に対する控訴は棄却)

生活保護基準中の生活扶助基準の改定のうちデフレ調整について、物価変動率のみを直接の指標として用いた点で裁量権の逸脱又は濫用があり違法として、保護変更決定を取り消した。国家賠償請求は棄却した。

生活保護変更決定処分取消等 生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求控訴事件

事案
市内に居住して生活扶助を受給していた控訴人らは、平成25年から平成27年に厚生労働大臣が行った生活扶助基準の改定(本件保護基準改定)を理由として、支給額を変更する保護変更決定を受けた。控訴人らは、改定は違法であるとして、市に対して保護変更決定の取消しを、国に対して国家賠償法1条1項に基づく慰謝料(1人当たり2万円又は1万円)の支払を求めた。原審は請求をいずれも棄却した。被控訴人らは当審で、改定が最高裁令和7年6月27日第三小法廷判決の述べた理由によって生活保護法に違反することについては争わない旨を陳述した。
争点
本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか。改定は国家賠償法の適用上違法か。
判断
厚生労働大臣の裁量判断の審理は、判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等を審査すべきであるとした(最高裁の先例を引用)。ゆがみ調整(平成25年検証の結果の2分の1のみを反映)については、合理的関連性や整合性に欠けるところはなく、基準部会等の専門家の意見を聴取しなかったことをもって過誤、欠落があったとはいえないとした。デフレ調整(基準生活費を一律に4.78%減額)については、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じていると判断したことには合理的関連性や整合性に欠けるところがあるとはいい難いとした。しかし、物価変動率は消費実態を把握するものとして限界のある指標であり、物価変動率のみを直接の指標とすることが合理的であるというには、物価と最低限度の消費水準との関係や、従来の水準均衡方式による改定との連続性、整合性の観点を含め、専門的知見に基づいた十分な説明が必要であるところ、基準部会等による審議検討が経られていないなど、これを基礎付ける専門的知見があるとは認められないとして、判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとした。改定後の平成29年検証の結果によっては、この評価は左右されないとした。したがって、改定は生活保護法3条、8条2項に違反して違法であるとして、市に関する部分の原判決を取り消し、保護変更決定を取り消した。国家賠償請求については、厚生労働大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と改定をしたと認め得る事情は認められないとして、国家賠償法1条1項の違法があったとはいえず、国に対する控訴を棄却した。
関係条文
生活保護法3条、8条2項、国家賠償法1条1項
判示事項
1 平成25年及び平成27年に行われた、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に生じていた不均衡を是正するに当たり、物価変動率のみを直接の指標として用いることについて、社会保障審議会の生活保護基準部会等による審議検討は経られていないことなど、判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法である。 2 上記生活扶助基準の改定は、厚生労働省社会・援護局長の下に設置された検討会が平成19年11月に公表した報告書において、生活扶助基準額が一般低所得世帯における生活扶助相当支出額(消費支出額から家賃、医療等の生活扶助に相当しないものを除いたもの)より高い状態にある旨の指摘があったことのほか、平成20年頃から平成23年頃にかけて、物価、賃金、家計消費がいずれも下落していたこと、平成24年8月に施行された社会保障制度改革推進法附則2条1号において、政府は生活保護制度に関し生活扶助の給付水準の適正化その他の必要な見直しを早急に行うものとする旨が規定されていたことなど、判示の事情の下では、国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできない。(裁判所ウェブサイトの記載)

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