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著作権の権利ガイド テーマ別:著作物性・類似性

著作物性・類似性の規範の整理(専門家)

翻案・複製の判断の枠組み、依拠、応用美術の著作物性について、最高裁と知財高裁が示した規範を、判決文と裁判要旨の言葉に沿って整理します。

このページの判決文の引用は、裁判所ウェブサイトの PDF をもとにしていますが、原本との文言の照合がまだ済んでいません。照合前の引用には「原文照合前」と表示しています。正確な文言は、各判決の全文で確認してください。

1. このページの範囲

このページは、著作物性(第2条第1項第1号)と、複製・翻案に当たるかの判断(類似性・依拠)について、最高裁と知財高裁が示した規範を整理するものです。評価や実務への示唆は書いていません。

引用は、判決文のほか、裁判所ウェブサイトの「裁判要旨」の文言を使っています。裁判要旨からの引用には、その旨を表示しています。

2. 条文の構造

著作権法には「類似」という言葉は出てきません。似ているかどうかは、複製(第21条)・翻案(第27条)に当たるかの判断として、判例が枠組みを示してきました。

著作権法(e-Gov 法令検索)

第2条第1項第1号
著作物の定義
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの。
第10条
著作物の例示
言語、音楽、舞踊・無言劇、美術、建築、図形、映画、写真、プログラム。事実の伝達にすぎない雑報・時事の報道は言語の著作物に当たらない(第2項)。
第21条
複製権
著作物を有形的に再製する権利(定義は第2条第1項第15号)。
第27条
翻案権など
著作物を翻訳し、編曲し、変形し、脚色し、映画化し、その他翻案する権利。
判例の枠組み
依拠+本質的特徴の直接感得
既存の著作物に依拠し、表現上の本質的な特徴を直接感得できるとき、複製・翻案に当たる。表現でない部分・創作性のない部分の同一性にとどまるときは当たらない。

表は条文の要点をまとめたもので、条文の文言そのものではありません。

  1. 1978年9月7日

    最高裁:依拠がなければ、似ていても侵害の責任を負わない

    過失の有無にかかわらない

  2. 2001年6月28日

    最高裁:翻案の定義。表現でない部分・創作性のない部分の同一性では足りない

    表現上の本質的な特徴の直接感得

  3. 2021年12月8日

    知財高裁:タコの形の滑り台は美術の著作物に当たらない

    機能に係る構成と分離して把握できるか

  4. 2026年4月24日

    最高裁:実用品が美術の著作物に当たる場合の基準

    機能に由来する構成とは別個に、創作的な表現として把握できるか

図1 著作物性・類似性についての主な判断

3. 判決ごとの整理

最高裁判決は通称を1回だけ併記し、下級審は裁判所・日付・事件番号で示します。当事者は役割で書いています。金額の数字は載せていません。

最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月7日判決(昭和50年(オ)第324号)

いわゆるワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件

事案

[作曲家]がつくった曲が、以前からある外国の曲と似ているとして、外国の曲の[権利者]側との間で、著作権の侵害があるかが争われました。

裁判所の判断

既存の著作物に接する機会がなく、その存在や内容を知らないで、これと同じような作品をつくった人は、知らなかったことに過失があるかどうかにかかわらず、著作権侵害の責任を負わない、としました。

複製というためには、既存の著作物に依拠して再製したことが必要だ、という考え方です。

判決文・裁判要旨から

裁判要旨「既存の著作物に接する機会がなかつたためその存在、内容を知らないでこれと同一性のある作品を作成した者は、右著作物の存在、内容を知らなかつたことにつき過失があると否とにかかわらず、著作権侵害の責任を負わない。」原文照合前

判決全文(裁判所ウェブサイト、PDF)

最高裁判所第一小法廷 平成13年6月28日判決(平成11年(受)第922号)

いわゆる江差追分事件

事案

[作家]は、民謡についてのノンフィクションを書いていました。[放送事業者]は、その民謡を扱うテレビ番組をつくり、番組のナレーションに、作品のプロローグと同じような内容を含めました。

[作家]が、翻案権などの侵害を理由に損害賠償などを求めました。

裁判所の判断

言語の著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に修正や変更などを加えて、新たに思想や感情を創作的に表現し、これに接する人が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感じ取れる別の著作物をつくることだ、としました。

アイデアや事実など表現それ自体でない部分、または表現上の創作性がない部分で同じであるにすぎないときは、翻案に当たらない、としました。

この事案では、同じなのは事実や一般的な考えなどで、ナレーションから作品の表現上の本質的な特徴を直接感じ取ることはできないとして、翻案権の侵害を認めませんでした。

判決文・裁判要旨から

裁判要旨「思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の言語の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は,既存の著作物の翻案に当たらない。」原文照合前

判決全文(裁判所ウェブサイト、PDF)

知的財産高等裁判所第1部 令和3年12月8日判決(令和3年(ネ)第10044号)

事案

タコの形をした公園の滑り台について、これをデザインした[制作者]の側が、似た滑り台をつくった[別の会社]に、著作権の侵害を主張しました。

裁判所の判断

実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的な表現を備えている部分を把握できるものは、その部分を含む作品全体が美術の著作物として保護され得る、としました。

タコの頭部の形の部分は、滑り台としての機能に必要な構成と切り離して創作的な表現を取り出せず、頭部の天蓋の部分もありふれた形だとして、美術の著作物に当たらないとしました。

判決文から

「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して,美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものについては,当該部分を含む作品全体が美術の著作物として,保護され得ると解するのが相当である。」原文照合前

この判決のあとに、最高裁令和8年4月24日判決が、実用品の著作物性の判断の基準を示しています。最高裁の補足意見は、「美的鑑賞」という言葉を使わなかった理由に触れています。

判決全文(裁判所ウェブサイト、PDF)

最高裁判所第二小法廷 令和8年4月24日判決(令和7年(受)第356号)

事案

[家具メーカー]が、子ども用の椅子のデザインが美術の著作物に当たるとして、似た椅子を製造・販売する[競業者]に、著作権の侵害などを理由に差止めや損害賠償を求めました。

裁判所の判断

量産されて日常生活で実用に供される物品の形や模様、色が、観念上、実用目的に必要な機能に由来する構成とは別に、思想や感情の創作的な表現として把握できる場合には、美術の著作物に当たる、としました。

理由として、量産される実用品の形は意匠法が登録などの要件を設けて保護していること、創作的な形であれば広く著作権で保護すると、意匠法の制度の趣旨を損ない、産業上の利用を妨げるおそれがあることを挙げました。

この椅子の脚の傾きや座面・足置きの配置などは、子ども用の椅子としての機能に由来する構成であり、別に把握できる創作的な表現ではないとして、著作物に当たらないとしました。補足意見があります。

判決文・裁判要旨から

裁判要旨「量産されて日常生活の中で実用に供されることが予定されている物品の全体又は部分における形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が、観念上、実用目的に必要な機能に由来する構成とは別個に、思想又は感情の創作的な表現として把握することができるものである場合には、当該物品の全体又は部分は、著作権法2条1項1号にいう著作物のうち、美術の範囲に属するものに当たる。」原文照合前

判決全文(裁判所ウェブサイト、PDF)

4. 並べて見えること

  • ・複製・翻案の判断は、依拠と、表現上の本質的な特徴の直接感得という2つの要素で組み立てられています(最高裁昭和53年9月7日判決、平成13年6月28日判決)。
  • ・最高裁平成13年6月28日判決は、同一性のある部分が「表現それ自体でない部分」または「表現上の創作性がない部分」にとどまる場合を、翻案から除いています。比較の対象を、表現で、かつ創作性のある部分に絞る考え方です。
  • ・依拠について、最高裁昭和53年9月7日判決は、既存の著作物を知らなかった者は、知らなかったことの過失の有無にかかわらず責任を負わないとしました。
  • ・実用品のデザインについて、最高裁令和8年4月24日判決は、意匠法との関係を理由に挙げ、「観念上、実用目的に必要な機能に由来する構成とは別個に」把握できるかを基準にしました。それより前の知財高裁令和3年12月8日判決は、機能に係る構成と「分離して」「美的鑑賞の対象となり得る美的特性」を備える部分を把握できるかを問うていました。最高裁の補足意見は、「美的鑑賞」の語を用いなかった理由に触れています。

5. 残る問い

  • ・最高裁令和8年4月24日判決の基準のもとで、これまで知財高裁が判断してきた応用美術の事件の結論が、どこまで同じになるのか。
  • ・表現上の本質的な特徴の判断が、絵、写真、音楽、プログラムなど、作品の種類ごとにどのように行われるか。
  • ・生成AIの出力のように、つくった人が既存の作品を直接見ていない場合に、依拠をどう考えるか(「AIと著作権」のページで扱います)。

6. 資料

判決の整理は、判決文に書かれていることをまとめたもので、評価や、個別の事案への当てはめを示すものではありません。法律相談・法的助言ではありません。

【試作】このページの条文は、e-Gov 法令検索の原文との確認がまだ済んでいません。順に取得し直します。その後の改正は反映されていないことがあります。引用や判断の根拠にする前に、e-Gov 法令検索で最新の条文を確認してください。行政資料の記載は、各資料の原文で確認してください。このページは著作権制度の一般的な説明で、法律相談や個別の事案についての法的助言ではありません。