著作権の権利ガイド テーマ別:職務著作・帰属
職務著作・権利の帰属の裁判例(中級)
職務著作の「業務に従事する者」の判断と、譲渡の契約の読み方について、論点ごとに見ていきます。
このページの判決文の引用は、裁判所ウェブサイトの PDF をもとにしていますが、原本との文言の照合がまだ済んでいません。照合前の引用には「原文照合前」と表示しています。正確な文言は、各判決の全文で確認してください。
A. 「法人等の業務に従事する者」とはだれか
問い
雇用契約書がない人がつくった作品でも、職務著作になるか。
答え(要点)
形式ではなく、指揮監督下で労務を提供し、その対価を受けているかという実態を、具体的事情から総合的に判断するとした最高裁判決がある。
職務著作になるには、作品をつくった人が「法人等の業務に従事する者」である必要があります。社員(雇用関係にある人)が当たることは明らかです。
雇用関係があるかが争われたとき、最高裁は、契約書や在留資格などの形式ではなく、会社の指揮監督のもとで働き、その対価として支払を受けていたかという実態で判断するとしました。
最高裁判所第二小法廷 平成15年4月11日判決(平成13年(受)第216号)
いわゆるRGBアドベンチャー事件
事案
外国籍の[デザイナー]が、観光ビザで日本に滞在し、アニメーションの企画などをする[会社]の事務所で作業をして、会社の企画するアニメーションに使う図画を作成しました。会社からは、毎月、基本給の名目で一定額の支払を受け、給料支払明細書も受け取っていました。
[デザイナー]が、図画の著作権は自分にあるとして、[会社]に使用の差止めなどを求めました。原審は、在留資格や雇用契約書がないことなどから雇用関係を否定し、職務著作に当たらないとしていました。
裁判所の判断
雇用関係の存否が争われた場合、「法人等の業務に従事する者」に当たるかは、法人等と作成者との関係を実質的にみて、法人等の指揮監督下で労務を提供する実態にあり、法人等が支払う金銭が労務提供の対価と評価できるかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額や支払方法などの具体的事情を総合的に考慮して判断すべきだとしました。
指揮監督をしていたかを確定せず、在留資格の種別や雇用契約書の存否などの形式的な事由を主な根拠として雇用関係を否定した原審の判断には違法があるとして、原判決を破棄し、差し戻しました。
判決文・裁判要旨から
「法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である。」原文照合前
裁判要旨「甲がした作業について乙が指揮監督をしていたかどうかを確定することなく,甲の在留資格の種別,雇用契約書の存否等の形式的な事由を主たる根拠として,甲と乙との間の雇用関係の存在を否定し,甲が著作権法15条1項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たらないとした原審の判断には,違法がある。」原文照合前
B. 「著作権をすべて譲渡する」と書いた契約
問い
「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約で、翻案権も移るか。
答え(要点)
第27条・第28条の権利が譲渡の目的として特に書かれていなければ、譲渡した人に残ったものと推定される(第61条第2項)。推定なので、契約の経緯などから覆ることもある。
第61条第2項は、第27条(翻訳権・翻案権など)と第28条(二次的著作物の利用に関する権利)が譲渡の目的として特に書かれていないときは、譲渡した人に残ったものと推定すると定めています。
契約書では、「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)」のように書くことが多くあります。
推定なので、反対の事情が証明されれば覆ります。どのような事情で覆るかは、個別の契約と経緯によります。
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