「BitTorrentの仕組み」の解説動画を、生成AI動画を使わずにClaude Codeで作った記録 ― 試したこと、失敗したこと
1本作ってみた記録です。特定のサービスの性能や安全性を評価・保証するものではありません。仕様や料金は変わるので、実際に使う前に各サービスの画面で確認してください(2026年9月時点)。動画の内容はBitTorrentという技術の一般的な説明で、個別の事件とは関係ありません。法律相談・法的助言ではありません。
前回はAIで15秒のイメージ動画を作りました。今回は、中身のある「解説動画」が作れるかを試しました。題材は、ファイル共有の技術であるBitTorrentの仕組みです。当事務所は著作権の分野を扱っており、この技術の説明を求められることが多いためです。できたものが次の映像です。
きっかけ
「新しい言語モデルが動画編集ソフトを直接操作して、1本30万円から100万円の単価の映像を数時間で作る」という紹介動画を見ました。動画を見た限りでは、投稿者自身が映像のプロで、参考画像を選び、映像表現の理論を教え、展開を自分で言語化して、ようやく「そこそこ」の結果が出ています。「素人でもできる」という題名は、本人の説明と合っていませんでした。
ただ、「作業の単価は下がる。判断の値段は残る」という見立てには同意できました。そこで、事務所で説明用の動画を作るとして、どこまでを機械に任せられるのかを、実際に1本作って確かめることにしました。
最初の分かれ道:生成AI動画か、自分で描くか
手元には、Claude Codeから動画生成サービス(Higgsfield)を呼び出す設定がありました。そこには、ナレーション付きの解説動画を丸ごと作る「ワークフロー」も用意されています。まずそれを読みに行きましたが、指示書だけで12万文字あり、声の選択・字幕・サムネイルまで含めて何段階もの問答を経る作りでした。
それ以上に気になったのは、正確さです。生成AIの映像は「それらしい絵」は出ますが、「ファイルが小さな断片に分かれ、断片が複数の相手から同時に届き、受け取った側がすぐ他へ送る」という仕組みを、間違いなく描く保証がありません。日本語の文字も苦手です。解説動画は絵が正しくなければ意味がないので、今回は生成AI動画を使わず、映像をプログラムで描く方法を選びました。
- 画面は、ブラウザの描画機能(HTML Canvas)で描く。「時刻tのときに何を描くか」を関数として書き、8つの場面と末尾のカードを用意した。
- その画面を、画面のないブラウザ(ヘッドレスChrome)で1コマずつ撮影し、動画変換ツール(ffmpeg)でつなぐ。1080p・30コマ毎秒で約2,500コマ、書き出しに4分ほど。
- 場面の切り替え時刻は、ナレーションの音声ファイルの長さから自動で計算する。声を差し替えると、映像の長さも自動で変わる。
この方法の利点は、費用がかからないこと、絵が指示どおりに正確に出ること、文言や色の修正が数行の書き換えで済むことです。欠点は、絵の質が「図解」の域を出ないことで、紹介動画にあったような3Dのモーショングラフィックにはなりません。
映像の確認で直したこと
Claudeは画像を見ることができるので、各場面の静止画を1枚に並べて確認してもらいました。その結果、次のような重なりが見つかり、4回に分けて直しました。
- 「ハッシュ検証」の場面で、1枚目の「一致」と2枚目の「不一致」の文字が同じ位置に重なって表示されていた。前の結果を消してから次を出すように直した。
- ノードの名前と、その下の断片の一覧が接触していた。
- 環状に並べたノードの一番下が、字幕の帯に隠れていた。輪の中心を上にずらした。
- 末尾の事務所名のカードに、途中の場面と同じ「08」という場面番号が残っていた。
こうした確認は、動画を通しで見なくても、静止画を並べればできます。ただし、動きの中でだけ起きる問題(矢印の速さ、点滅の間隔)は静止画では分からず、最後は人が通しで見る必要がありました。
ナレーション:7種類試して、6回やり直した
一番時間を使ったのが声です。映像は最初からほぼ狙いどおりでしたが、声は次の順に試し、そのたびに動画全体を作り直しました。
- OpenAIの読み上げ:接続の設定(APIキー)がなく、使えなかった。
- Googleの読み上げ(Gemini):同じく設定がなく、使えなかった。
- ElevenLabs:無料アカウントでは、用意された声をプログラムから使えない(有料プランが必要)というエラーで止まった。
- macOSに内蔵の日本語音声(Kyoko):追加の設定なしで動いた。ここで1本目(v1)を作った。聞けるが、合成音声らしさが強い。
- Higgsfield経由のSeed Audio(ByteDance)の日本語男声:2本目(v2)。聞いた感想は「外国の人が日本語を読んでいるよう」で、不採用。9行で約2クレジット(1行0.2)。
- Higgsfield経由のMiniMaxとElevenLabsの声を5通り:同じ一文だけを作って聴き比べ、MiniMaxの女声を選んで3本目(v3)を作った。ここで一度は完成としました。
- VOICEVOX(無料・パソコン内で動く日本語の読み上げ):6つの声で同じ一文を作って聴き比べ、「青山龍星」を選んで4本目(v4、最終)を作った。
VOICEVOXの導入では、macOSの保護機能に「開発元を確認できない」と止められ、「インストールできなかった」と思い込みました。実際にはアプリは入っていて、起動だけが止められている状態でした。システム設定の「プライバシーとセキュリティ」から許可すると起動できました。この許可はセキュリティ設定の変更なので、Claudeには行わせず、人が操作しました。
声について分かったことは単純で、「声は聞いた人が決めるしかない」ということです。Claudeは音声を聞けません。どの声が自然かを機械に判断させることはできず、同じ一文を複数の声で作って人が聴き比べるのが、結局一番早い方法でした。
VOICEVOXは、商用利用にあたりキャラクターごとのクレジット表記(「VOICEVOX:青山龍星」)が必要です。動画の末尾と、この記事に入れています。
音の細かい話
- 読み上げの音声には前後に無音が入るので、切り詰めてから場面に配置した。声を替えるたびに、全体の長さが1分25秒から1分42秒の間で変わった。
- 背景の環境音は、既存の楽曲を使わず、ffmpegの機能で低い正弦波を数本重ねて作った。権利の問題を避けるためで、音楽としては簡素。
- その環境音を作る式の引用符が足りず、一度エラーで止まった。
- 声の音量が読み上げの種類ごとに違うので、そのたびに声を上げ、環境音を下げる調整をした。
事務所名の表示
末尾に事務所名のカードを入れました。このサイトには画像のロゴがなく、文字のロゴだけなので、同じ体裁(白のセリフ体、オレンジの差し色、標語)で描いています。弁護士法人の広告としての表示は、法人名と所属弁護士会を入れています。
費用と時間
- 生成サービスのクレジット消費:合計で約5クレジット(声の聴き比べの分を含む)。映像の描画とVOICEVOXは0円。
- 所要時間:指示から最終版まで、会話と待ち時間を含めて約2時間。うち映像の作成は30分ほどで、残りは声の試行錯誤。
- 最終版はパソコン内だけで作れるので、依頼者や事件に関する情報を外部に送る必要はない。
できていないこと
- 読み上げの読み間違い(漢字の読み、専門用語のアクセント)は、人が通しで聞いて確かめる必要がある。
- 背景の音は簡素で、音楽と呼べるものではない。
- 紹介動画にあった、動画編集ソフトを直接操作する方法は試していない。有料の編集ソフトと、十分なメモリの機材が要る。
- 生成AI動画で解説動画を作る本命の方法も、今回は使っていない。図解の正確さを保てるかは、別に試す必要がある。
感想
「AIが動画を作る」という言い方は、今回の経験では半分だけ当たっています。図解を描き、書き出し、重なりを直す作業は、指示すればほぼ機械が行いました。一方で、何を説明するか、どの順に見せるか、どの声を使うか、読み間違いがないかは、人が決めるか確かめるかしなければ進みませんでした。冒頭の紹介動画の「作業は安くなり、判断は残る」という見立てどおりでした。
次に試すこと
- 縦型の短い版を作る。
- 台本だけを渡して、同じ体裁で別の題材の動画が作れるかを試す。
- 生成AI動画の解説ワークフローで同じ題材を作り、図解の正確さと費用を比べる。
本記事は、特定のサービスの性能や安全性を評価・保証するものではなく、1本作ってみた記録です。依頼者や事件に関する資料は、外部の生成サービスに入力していません。ナレーションは合成音声(VOICEVOX:青山龍星)です。