ITJ Lab
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AI Practice

AIで法律事務所のHPを作る ― v0とClaudeで1日で構築した記録

ここで挙げるツールの機能や料金は更新が早く、この記事は2026年9月時点の私の理解です。実際に使う前に、各サービスの画面で最新の内容を確認してください。

法律事務所のホームページは、これまで制作会社かエンジニアに頼むものでした。今回、エンジニアに依頼している既存サイトとは別に、実験用の新しいサイトを、弁護士が自分で運営できる形で作りました。AIのツール選びから、ドメイン、公開、広告規制の確認、英語版の追加まで、1日で進めた過程を記録します。同じことを考えている他の先生の参考になればと思います。

何を作ったか

  • 名称は「ITJ Lab」。当事務所の研究・実験の記録を発信するサイトです。
  • 柱は3つです。Tech Research(BitTorrentなど技術の研究)、New Law(新しい法律問題の解説)、AI Practice(法律事務所へのAI導入の記録)。
  • 日本語版と、海外の弁護士との意見交換を目的にした英語版の二本立てです。
  • 既存のnoteの記事を、選んだものだけ自動で取り込んで表示します。
  • 新しいドメインで、既存の2サイトには一切触れずに作りました。

ツール選び:Manus か、Claude+v0 か

最初に迷ったのは、汎用のAIエージェント(Manus)と、Claude+v0の組み合わせのどちらで作るかでした。私はManusでは実際には作っていないので、以下は一般的な特徴に基づく比較です。

Manusは、指示から公開まで一括で任せる進め方です。初動が速く、コードを書かなくても成果物まで届くのが長所です。一方で、中身が見えにくく、修正のたびに消費が増え、後から引き継ぎにくいという短所があります。

Claude+v0は、v0で画面を作り、Claudeで文章・設計・修正を行う進め方です。画面の出来が良く、コードが手元に残り、細かい修正と保守ができるのが長所です。一方で、v0とClaudeの間を行き来する手間があります。

私はClaude+v0を選びました。理由は、このサイトが作って終わりではなく、今後も直し続けるものだからです。広告規制に触れる表現を1行ずつ直せること、問い合わせ内容などの機密データの保管先を自分で選べること、後からエンジニアに引き継げることを重視しました。Manusは、たたき台を見比べる段階なら使えると思います。

最初に決めたこと

新しいドメインで始めることにしました。既存のサイトを壊さないために、実験は別ドメインにしました。既存サイトにはメール(info@…)が紐づいているため、DNSに触れるリスクを避けたかったからです。ドメインは、契約者を個人ではなく事務所の名義にしておくと、後で揉めません。

事務所名を出すか、弁護士個人を出すかも検討しました。最初は「個人名のラボ」にする案もありましたが、最終的に事務所名を主に出し、弁護士個人の名前は前面に出さない形にしました。運営者欄に書くだけで、「調べれば出てくる」程度です。研究・実験の発信は、事務所の活動として整理した方が、広告規制の面でも、引き継ぎの面でも扱いやすいと考えました。

配色は、落ち着いた地中海ブルーを基調に、差し色のオレンジは面積を5〜10%に抑えました。オレンジ地に白文字は、読みにくいので避けています。

作った手順

  • v0でトップページを生成する。長いプロンプトを一度に渡すと、指定の取りこぼしが出やすくなります。無料プランで使えるモデルは軽量なものだけだったため、構成、配色、免責の順に分けて依頼する運用が現実的でした。
  • GitHubに書き出す。v0のプロジェクトをGitHubのリポジトリに接続し、非公開(Private)にしました。
  • 手元にクローンして、Claudeでコードを直す。ここから先の細かい修正は、v0ではなくClaudeに任せました。v0のクレジットを使わずに済みます。
  • Vercelで公開する。GitHubにプッシュすると、自動で公開に反映されます。
  • ドメインを接続する。Vercelの画面で追加し、www付きは、本体のドメインへ転送する設定にしました。

つまずいた点

  • v0が作ったコードに不具合があった。ボタンの書き方が、使っている部品に対応しておらず、リンクが正しく動かない形でした。しかも、設定でビルドの型エラーを無視する状態になっており、ビルドが通ってしまうため気づけませんでした。AIが作ったコードは、動くように見えても、中身を確認する必要があります。
  • 無料プランに戻ると、購入済みのクレジットが使えない表示になった。残高は残っているのに、合計に入りません。有料プランに入り直すと使える可能性が高いですが、プランの仕様は購入前に確認してください。
  • wwwの転送設定でエラーが出た。「本体とwwwの両方を含める」というチェックが入っていると、本体のドメインを、自分自身へ転送する設定になってしまい、エラーになります。チェックを外して解決しました。
  • 二要素認証を必ず設定する。ドメインとサイトの管理権限を持つアカウントです。乗っ取られると、サイトの差し替えやドメインの移転をされるおそれがあります。

弁護士広告規制への対応

実験サイトでも、事務所名を出して公開すれば広告です。今回、次の点を点検しました。

  • 所属弁護士会を明記する。フッターと、Aboutに入れました。
  • 断定的・誇大な表現を使わない。「最高」「絶対」「確実」、勝訴率、比較広告などです。
  • 実態のないものを「実験中」と書かない。最初にAIが作ったダミーの文章には、実際には始めていない実験が「実験中」として並んでいました。すべて「準備中」に直しました。AIが作った文は、事実と合っているか、必ず確認してください。
  • AI関連の表示に注意する。「AI法律相談」という名称は使わず、「法律情報の案内」とし、法律相談や法的助言ではないことを明記しました(弁護士法72条への配慮)。
  • 免責文を共通表示にする。個別の法的助言ではないこと、公開時点の法令に基づくこと、一部の記事はnote上で有料であることを書きました。

規程の条文の確認は、公開前に、日弁連の業務広告に関する規程と指針で行ってください。私の記載は条文を読み直したものではなく、確認の観点を整理したものです。

noteの記事を取り込む:全件ではなく「許可リスト」

これまでの発信をnoteで行っていたので、RSSで取り込むことにしました。ただし全件を自動で表示する方式は採りませんでした。noteには、係争中の事件の進捗を思わせる投稿や、法定の表示ページなど、研究サイトには載せない記事が混ざっていたためです。

そこで、表示する記事を1件ずつ指定する「許可リスト」方式にしました。記事のタイトル、日付、リンク、抜粋はRSSから自動で取得し、載せたい記事を増やすときは、リストに1行足します。有料記事の抜粋が「続きを読む」のような案内文になる場合は、手で書いた抜粋に置き換えます。

英語版:海外の弁護士との意見交換

日本のコンテンツがBitTorrentなどで海外でも侵害されているため、外国の弁護士との意見交換用に、英語のページを追加しました。ここでは、特に次の点に注意しました。

  • 案件の紹介、共同受任、報酬の分配を示唆しない。弁護士職務基本規程や弁護士法72条、相手国の勧誘規制への配慮です。「一般的な意見交換であり、法律サービスの提供ではない」ことを明記しました。
  • 個人情報を集めるフォームを作らない。連絡は、メールアドレスの掲載だけにしました。EUの居住者から情報を集めると、GDPRの検討が必要になるためです。
  • 損害額については、個別の目安を示さず、判決の引用にとどめる。
  • 係争中・受任事件に関する論評は載せない。

英語の記事を作る際に、別のAI調査ツールが出した日本語のレポートを参考に渡しました。一次資料で確認したところ、総務省の統計の数字は原文と一致していました。一方で、「知財高裁の判決」として書かれた日付と裁判所は、出典の判決文(東京地裁の別の日付の判決)と一致せず、出典リストには、ふるさと納税、M&A、牛肉など、無関係なページが多数含まれていました。AIの調査結果は、判決の引用や数字を、必ず一次資料で確認してから使う必要があります。確認できなかった部分は、記事に載せませんでした。

費用と時間

  • 作業時間は、実質1日です(待ち時間を含む)。
  • 費用は、ドメイン代、v0のクレジット、Vercelの利用です。Vercelは、この規模なら無料枠から始められました。ただし料金は改定されるので、実際の金額は各サービスの画面で確認してください。

他の先生へ:やってみたい方への注意点

  • 依頼者の情報や、受任事件の内容を、AIのツールに入れない。今回、AIに渡したのは、すでに公開されている自分の事務所のページと、公開資料だけです。
  • AIが作った文章と数字は、事実確認をする。特に、判決の引用、統計、実績の書き方です。
  • 広告規制は、AIに任せず、自分で確認する。AIは観点の洗い出しには使えますが、最終判断は弁護士が行います。
  • 既存のサイトを触らずに、新しいドメインで試す。
  • 公開は最後に。このサイトも、確認が済むまでは、検索に載らない設定(noindex)にしていました(確認後に外しました)。

今後

AI Practiceのコーナーでは、事務所へのAI導入の実験を、実際に進めた段階で記録していきます。うまくいかなかったことも含めて書くつもりです。

本記事は、業務広告に関する規程等の遵守を確認したものではなく、一般的な情報提供です。ツールの仕様や料金は変更されることがあります。