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知的財産高等裁判所第2部 令和8年9月30日 令和7(行ケ)10106等 判決・第1事件は審決の一部取消し、第2事件は請求棄却
タクシー運賃の精算システムの特許について、請求項1、2に係る発明の進歩性を認めた審決の部分を取り消し、請求項6に係る特許を無効とした審決の部分の取消請求を棄却した。
審決取消請求事件
- 事案
- 被告は、「精算システム、ホスト端末、精算方法、プログラム及び車両」の発明について特許権の設定登録を受けた。原告が請求項1、2及び6に係る特許の無効審判を請求し、被告は特許請求の範囲の訂正を請求した。特許庁は、訂正を認めたうえで、請求項1、2に係る発明についての審判請求は成り立たないとし、請求項6に係る発明についての特許を無効とする審決をした。原告が前者の部分の取消しを求め(第1事件)、被告が後者の部分の取消しを求めた(第2事件)。
- 争点
- 請求項1、2に係る発明は、タクシーの料金精算に関する先行公報に記載された発明と周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明できたか。請求項6に係る発明(ホスト端末の発明)の要旨を認定するうえで、管理端末に関する事項をどう扱うか。また、同発明は先行公報に記載された発明に基づいて容易に発明できたか。
- 判断
- 請求項1、2について、裁判所は審決の判断に誤りがあるとした。先行公報の発明は、タクシー端末が、近距離無線通信で接続された乗客の端末を中継機として利用情報をサーバに送り、料金が確定した後に料金情報を送って、サーバが両者を突き合わせて決済を要請するものである。これと請求項1に係る発明との相違点のうち、管理端末をタブレット端末とし、その管理表示部に取引を特定するための情報を表示して、ユーザ端末に読み取らせ、ユーザ端末から送信させる構成について、裁判所は次の点を認めた。(1)ユーザの操作によりタブレット端末等に二次元コードを表示させて読み取る方式は、原出願日当時、周知技術であった。(2)この方式を近距離無線通信方式に置き換えることや、両方式を併用することも周知であった。(3)近距離無線通信にはペアリングが行われない場合があるため、これに備えて二次元コード方式も用意することは、当時の技術常識であった。(4)タクシーの後部座席に広告等を表示するタブレット端末等を設置することも、当時の技術常識であった。(5)別の公報には、タクシーの利用者の携帯端末が、運転手の端末に表示される取引コード(二次元コード)を取得する実施形態が開示されていた。以上から、先行公報の発明に周知技術等を適用してこの構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとした。被告の、目的に反する、阻害要因がある、「容易の容易」であるとの主張は、いずれも採用しなかった。ユーザ情報の取得時期に関する相違点については、容易に想到し得たとした審決の判断に誤りはないとした。請求項2は請求項1を引用するから、同じ結論とした。裁判所は、別の先行公報に記載された発明(タクシーチケットの決済に関するもの)に基づく進歩性欠如の主張(取消事由2)も検討し、同様に、周知技術を適用して請求項1の構成とすることは容易であるとした。この検討では、請求項1の「ユーザ情報」は決済手段情報を含み、チケット番号がこれに当たるとして、審決が相違点とした点は相違点ではないとした。請求項2のみに係る構成要件については、審決が判断していないとして、判断を示さなかった。請求項6について、裁判所は、請求項6はホスト端末の発明(サブコンビネーション発明)であり、管理端末の管理表示部で表示される情報に関する事項は、管理端末のみを特定する事項であって、ホスト端末の構造、機能等を特定しないから、要旨認定から除外すべきだとした。この認定のもとで、管理端末に関する相違点は相違点と認められず、残る相違点(相違点1-6-2)は請求項1に係る相違点1-1-3と実質的に同じであり、容易に想到し得たとして、審決の判断に誤りはないとした。以上により、第1事件の請求を認容して審決のうち請求項1、2に係る審判請求を不成立とした部分を取り消し、第2事件の請求を棄却した。原告が主張した補正要件(新規事項の追加)、サポート要件、明確性要件に関する取消事由については、その余の点を判断するまでもないとして、判断しなかった。
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