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東京高等裁判所第14民事部 令和8年9月3日 令和8(行ケ)50001 判決・請求棄却
市長選挙の得票が同数であった事案で、氏名ではなく食品名や店の種類を示す語句が書かれた投票は、広く通用した通称とはいえず無効であるとした裁決を適法と判断した。
裁決取消請求事件
- 事案
- 令和7年11月9日執行の茨城県神栖市長選挙は、立候補者2名の得票がいずれも1万6724票で同数となり、くじにより原告が当選人とされた。選挙人らの異議申出は市の選挙管理委員会に棄却されたが、審査の申出を受けた被告は、令和8年4月28日、原告への投票とされた2票(食品名等が記載された票)と対立候補への投票とされた1票(頭注数字に丸印が記載された票)を無効と判定し、得票数を対立候補1万6723票、原告1万6722票として、原告の当選を無効とする裁決をした。原告は、公職選挙法207条1項に基づき、裁決の取消しを求めた。原告は、前記2票が原告への有効票であること、及び、対立候補への有効票とされた票のうち8票が無効であることを主張した。
- 争点
- 氏名以外の語句が記載された2票は、原告に対する投票として有効か。対立候補への投票とされた8票(一部の文字のみの記載、判読困難な記載、他事記載の有無が争われたもの)は有効か。
- 判断
- 裁判所は、通称の使用が認定されていない場合でも、法67条後段の趣旨から、通称により投票意思が判断できるときはできる限り有効とすべきであるが、通称といえるためには、その通称(屋号等)が、広く開票区の区域内のいずれの地においても慣習的に使用され、その通称であれば候補者本人を指すことが明らかであることを要すると解するのが相当であるとした。原告の家業が、地元で食品を製造して広く知られ、一定の範囲の者から食品名を冠した愛称で呼ばれている実情は認められるものの、これらの語句が原告の呼称として開票区全域で慣習的に使用されている状態にあると認めるに足りる証拠はないとした。これらの語句は屋号等ではなく、食品や店の種類を表す普通名詞にとどまり、同種の店が市内に複数あることなども踏まえ、本名に代わるものとして慣習的に使用されていたとは認め難いとして、2票は「候補者の何人を記載したかを確認し難いもの」(法68条1項8号)として無効とした。原告が提出した陳述書や、選挙管理委員会が選挙前に有効と予想していたことは、上記の判断を左右しないとした。対立候補への8票については、氏名の一部のみの記載、判読困難な記載、ひらがな様の記載はいずれも、記載の全体から対立候補への投票意思が明確であり、欄外の筆跡や直線の痕跡、不完全な文字等は、符号や暗号のように投票した選挙人を推知させる意識的な記載(他事記載)には当たらず、いずれも有効とした。以上から、裁決は適法であるとして、請求を棄却した。
- 関係条文
- 公職選挙法46条1項、67条、68条1項6号、68条1項8号、207条1項、公職選挙法施行令88条8項、89条5項
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