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東京地方裁判所民事第29部 令和8年9月18日 令和7(ワ)70697 判決・請求棄却

事業譲渡契約中の、所定の期限までに「商標登録に至らなかった場合」に代金から1200万円を減額して返還する旨の条項は、商標権の移転登録がされなかった場合を含まないとして、請求を棄却した。

商標権移転登録手続等請求事件

事案
原告は、令和2年12月25日、被告との間で、被告の撮影会事業を、出願中の商標を含めて譲り受ける事業譲渡契約を締結した。譲渡代金は7500万円であった。契約7条2項は、第35類の商標について令和3年12月末日までに、第41類及び第42類の商標について令和4年6月末日までに「商標登録に至らなかった場合」には、譲渡代金から1200万円が減額されて被告が原告に返還するものとし、あわせて原告が再出願する場合の実費(上限100万円)を被告が負担すると定めていた。対象の商標は、令和3年3月17日又は同年12月28日に被告名義で設定登録された。被告が原告に商標権の移転登録をしたのは、令和7年10月6日であった。原告は、被告が期限までに移転登録をしなかったことが「商標登録に至らなかった場合」にあたるとして、1200万円及び令和4年2月1日からの遅延損害金(年3パーセント)の支払を求めた。
争点
契約7条2項の「商標登録に至らなかった場合」に、設定登録後の商標権の移転登録がされなかった場合が含まれるか。
判断
裁判所は、同項は文言上、出願中の商標について所定の期限までに設定登録がされなかった場合を定めたものと解することができるとした。そのうえで、移転登録がされなかった場合も含むと解することについて、次の点を挙げて否定した。同項後段は、原告が再出願を行う際に被告が費用を負担することを定めており、出願について設定登録が未了であることを前提としているから、前段に移転登録が未了の場合を含めると同一の条項内に矛盾を包含すること。違約金の定めと解することは、条の標題が「清算・補償」とされていることと整合しないこと。移転登録が1日でも遅れれば1200万円を支払うことになり、譲渡代金に比しても著しく多額で、そのような額で移転登録の履行を確保する必要があったとは解し難いこと。設定登録後に被告の取締役が原告の担当者に移転を働きかけたのに対し、原告の担当者がまだ動けていないが直ちに行う旨を返答していたことから、原告が早期に移転登録を確保すべく行動していたか疑わしいこと。そして、契約締結時に商標は審査中で、権利の取得には特許庁の査定という他律的な要素が含まれていたことから、同項は、出願中の商標が拒絶査定を受けるなどして原告が商標権を取得できなかった場合に備え、代金から商標権の価値に相当する金額を割り戻して清算し、再出願の費用を補償する趣旨と解するのが当事者の合理的意思に合致するとした。原告の、移転登録を含まないとすると同項は移転義務の履行確保の機能を持たず存在意義が失われるとの主張に対しては、同項は上記の意義を有するとして、採用しなかった。本件の各商標は、いずれも期限より前に設定登録に至っているから、同項所定の金員を支払うべき要件に該当しないとして、請求を棄却した。

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